教皇フランシスコは、2015年に、今世紀の最も大きな課題である環境問題を取り上げ、回勅『ラウダト・シ』を出されました。この文書は教会内だけでなく広く世界で読まれています。今回はこれについて概要をご紹介します。

『ラウダト・シ』は、アッシジの聖フランシスコという聖人の祈り、「太陽の賛歌」の一節“ラウダト・シ・ミ・シニョーレ”(わたしの主よ、あなたはたたえられますように)からとられた表題です。

教皇は、地球を「ともに暮らす家」と呼び、地球で起こっていることと、起こりつつある代表的な環境問題、気候変動、水問題、生物多様性の減少などについて、科学的根拠を踏まえて指摘しておられます。

前半では、この地球は神様の創造による本来美しい世界でることを私たちに思い起こさせ、人間の自然に対する振る舞いが危機的状況を招いていることを警告しています。自然の枯渇や環境汚染などのエコロジカルな問題は、政治や経済、文化、日常生活という多様な分野に密接にかかわっています。科学技術至上主義、消費主義による行き過ぎた自然資源の乱用は、生態系だけでなく、社会の中で弱く貧しくされた人々をますます傷つけていることを強調し、環境問題はエコロジカルな問題であると同時に、人間の根源的危機であると、強く訴えておられます。

後半部分では、後の世代、今成長しつつある子供たちに、どのような世界を残そうとするのかと問いかけ、自然の本来の秩序を守るために、私たち、世界に対する一人ひとりの責任と、弱い人々に対する配慮を持った「総合的エコロジー」の必要性を呼びかけておられます。

この文書が出されて2年、環境問題への取り組みは創造主である神から責任を問われている課題であるという、教皇の確信は教会の内外を問わず、環境問題と格闘する多くの人々に励ましと力を与えました。その後パリで開催された気候変動枠組条約21回締約国会議(COP21)において、参加国が例外なくそれぞれの責任を具体的な形で果たすと約束したことは周知のとおりです。「パリ協定」を後押ししたのもこの回勅でした。

限りある天然資源は皆で譲り合い、貧しい人々と分かち合うべきものであり、将来の子孫たちを遠く射程に収めたものでなければなりません。私たちも「ともに暮らす地球を大切に」する人々の輪に、奉仕の心をもって加わるよう呼ばれています。わたし達の力は小さなものですが、その足元から実践していく以外に道はありません。

教会では、去る10月4日、アッシジの聖フランシスコの祝日を祝いました。神への信頼のみを財産として、聖なる貧しさの道を極めた聖人だからこそ、大自然の中に現存される神と触れ、地上のあらゆる被造物のために、賛美と感謝を歌うことができたのでしょう。

わたしたちも、神さまからの贈り物であるこの母なる大地を、ともに讃えて歌いましょう。

被造物とともに捧げるキリスト者の祈り

フランシスコ教皇

 父よ、
 あなたが造られたすべての物とともに、あなたをたたえます。
 すべてのものは、全能のみ手から生み出されたもの。
 すべてのものはあなたのもの、
 あなたの現存と優しい愛に満たされています。
 あなたはたたえられますように。

 神の子イエスよ、
 万物は、あなたによって造られました。

 あなたは母マリアの胎内で形づくられ、
 この地球の一部となられ、
 人間のまなざしで、この世界をご覧になりました。
 あなたは復活の栄光をもって、
 すべての被造物の中に今日も生きておられます。
 あなたはたたえられますように。

 聖霊よ、あなたはその光によって、
 この世界を御父の愛へと導き、
 苦しみにうめく被造物に寄り添ってくださいます。
 あなたはまた、わたしたちの心に住まい、
 善をなすよう、わたしたちを息吹かれます。
 あなたはたたえられますように。

 三一の主、
 無限の愛の驚くべき交わりよ、
 わたしたちに教えてください
 宇宙の美しさの中で、
 すべてのものがあなたについて語る場で、
 あなたを観想することを。
 あなたがお造りになったすべての存在にふさわしい、
 賛美と感謝を呼び覚ましてください。
 存在するすべてのものと深く結ばれていると感じる恵みをお与えください。

 愛の神よ、地球上のすべての被造物へのあなたの愛の道具として、
 この世界での私たちの役割をお示しください。
 あなたに忘れ去られることは何一つないからです。
 無関心の罪に陥らせず、
 共通善を愛し、弱い人々を支え、
 私たちの住むこの世界を大切にできるよう、
 権力や財力をもつ人々を照らしてください。
 貧しい人々と地球とが叫んでいます。

 おお、主よ、
 すべてのいのちを守るため、
 よりよい未来をひらくため、
 あなたの力と光でわたしたちをとらえてください。
 正義と平和と愛と美が支配する、あなたのみ国の到来のために。
 あなたはたたえられますように。
 アーメン。